
原種シクラメンは丈夫で長生きと言われる一方で、慣れないうちは休眠中の管理で失敗しやすく、長く楽しむためにも夏越しは避けて通れない関門です。
この記事では「原種シクラメンの夏越し」に特化し、
- 休眠中の置き場所
- 水やりの注意点
- 警戒すべき病害虫
など、初めて育てる際につまずきやすいポイントを詳しく解説します。
秋にまた愛らしい姿を見るためにも、参考にしていただければ幸いです。よろシクラメン。
置き場所
すべての種類で直射日光NG。
休眠しているかどうかに関わらず、どの種類もネット等で遮光するか、日陰や屋内で管理します。原種シクラメンは雨と直射日光さえ避ければ、比較的高温には強いです。
3000~10000luxほどの明るさであれば球根が焼けてしまうこともなく、常緑のプルプラセンスやコルチカムも生育可能です。
屋外で夏越し
軒下や簡易ビニールハウスなど雨が当たらず風の通る場所で、熱がこもらないよう管理します。ビニールハウスのように気温が40℃近くになるような環境の場合、休眠中でも球根は埋めた方が調子を崩しにくいです。
北向きの場所に置いたり遮光ネットやサンシェードなどを使い、一瞬たりとも直射日光に当てないよう注意します。とくに小さい鉢やプラ鉢は鉢内の温度が上がりやすいので、球根が埋まっていたとしても要注意です。
室内で夏越し
休眠中の株に明るさは必須ではないので、室内でも夏越し可能です。ラックなどに立体的に収納でき、他の植物に明るい場所を譲ることもできます。
室内で夏越しする際も、極端に熱がこもる場所は避けるようにします。冷房の影響が大きい場所も、休眠から目覚めてしまうため避けましょう。25~35℃で推移し、平均して30℃付近に収まるような場所で安定して夏越しできています。
冷房やLEDなど用意できるのであれば、常緑のプルプラセンスやコルチカムも室内で暑さを避けた方が生育は旺盛です。
休眠中でも水やりは必要
休眠中でも、球根が萎まない程度に水やりは必要です。水が不足した状態が続くと芽が傷んだり、最悪そのまま枯死してしまいます。
用土は乾燥気味を保ちつつも、球根には張りがありカチカチな状態が望ましいです。
球根の萎む早さ=耐乾性は株の種類だけでなく、球根サイズや環境によっても大きく変わります。種類だけで水やりを考えず、他の条件も加味して適切な頻度を探りましょう。
水やりの頻度の考え方① 「種類のちがい」

種類によって耐乾性に差があり、球根の萎む早さが異なります。
耐乾性が低い種類は根の細いものが多く、何日も用土がカラカラに乾いた状態が続くと傷みやすいです。
- レパンダム
- ロディウム
- クレチカム
- バレアリカム
- コウム
- パービフローラム
- インタミナタム
- シリシアム
- アルピナム
- エレガンス
- ヘデリフォリウム
- シプリアム
- リバノチカム
- ミラビレ
- スーダベリカム
- コンフューサム
- アフリカナム
- グラエカム
- マリチマム
- ペルシカム
- ローフシアナム
- プルプラセンス
- コルチカム
- 一部のパービフローラム
水やりの頻度の考え方② 「球根サイズのちがい」

同じ種類でも、球根サイズによって耐乾性に差があります。種類に関係なく、球根が小さい株ほど水やりの頻度を高くします。
例えば乾燥に強いとされているヘデリフォリウムでも、幼いうちは1~2週間の断水でも萎んだり芽が枯れてしまうことがあります。
流通している原種シクラメンの大半は、種まきから丸2~3年経過しているサイズです。乾燥に強いとされている種類でも、買ったばかりのサイズでの完全断水は避けた方が無難です。
水やりの頻度の考え方③ 「環境のちがい」
鉢や用土など、環境によっても球根の萎み方は変わってきます。自分の環境で水やりに過不足がないか、球根の状態を見ながら探っていきましょう。
| 鉢の材質 | 球根と鉢のサイズ比 | 用土 | 球根の露出 | |
| 萎みが早い | 素焼き鉢 | 小さい | 粗い | 露出する |
| 萎みが遅い | プラ鉢 | 大きい | 細かい | 埋める |
実際の水やり頻度の例
ポイントは、「球根が萎む前に、必要な分だけ水を与えること」です。頻度が低すぎるとやがて枯死していまいますし、多すぎても腐敗や徒長を招きます。
「この種類は水やりする/断水する」と決めるのではなく、球根サイズや環境込みで水やりの頻度を考えましょう。
- 置き場所:室内 25~35℃
- 鉢の材質:プラスチック
- 鉢サイズ:球根がちょうど収まる程度
- 用土:鹿沼土細粒
- 球根:露出
3~4日に1回の水やり
- レパンダム
- ロディウム
- クレチカム
- バレアリカム
- パービフローラム
- コウム(小苗)
- インタミナタム(小苗)
- 種類問わず、発芽して1年未満の幼苗
5~7日に1回の水やり
- コウム(充実株)
- アルピナム
- エレガンス
- シリシアム
- インタミナタム(充実株)
- ヘデリフォリウム(小苗)
- シプリアム(小苗)
- リバノチカム(小苗)
1~2週に1回の水やり
- ヘデリフォリウム(充実株)
- コンフューサム
- シプリアム(充実株)
- リバノチカム(充実株)
- ミラビレ(小苗)
- スーダベリカム(小苗)
2~3週に1回の水やり
- アフリカナム
- ミラビレ(充実株)
- スーダベリカム(充実株)
- グラエカム(小苗)
- マリチナム(小苗)
- ローフシアナム(小苗)
- ペルシカム(小苗)
1ヶ月に1回の水やり
- グラエカム(充実株)
- マリチマム(充実株)
- ローフシアナム(充実株)
- ペルシカム(充実株)
水やりの量と方法
少量の水で根を湿らせる

根の周辺を湿らせるイメージで、根がとくに多い鉢の側面に少量の水を与えます。コウムなど根の位置が深い種類は表土だけ濡れていても上手く水を吸えないので、深くまで水が届くようにします。
与える量は、底から水が出ず翌日には表土が乾いている程度を目安にしています。一度にあまり多く与えてしまうとなかなか乾かないので注意します。
鉢の大きさで方法を変える

根の多い箇所を濡らすことが目的なので、鉢や球根のサイズによって水を与える箇所を変えています。鉢の内側側面に水を伝わせるようにすると少量の水で球根に水分を供給でき、長時間の過湿を防ぐことができます。
- 3号以下の鉢:側面2ヶ所
- 4号以上の鉢:側面3~4ヶ所
- 鉢に対して小さい球根:側面2ヶ所と中央
肥料
休眠中は肥料を与えません。
常緑のプルプラセンスやコルチカムには引き続き薄い液肥を与えますが、7~9月のあまりに暑さが酷い時期はさらに薄めにして与えます。
休眠中に球根は露出させる?埋める?
初めての夏越しは球根露出がおすすめ
夏越し中でも球根は埋めておいた方が暑さに強く、秋以降の生育も旺盛になります。
しかし原種シクラメンは夏越し中に水やりの過不足で失敗しやすいので、初めて育てる時には少し球根を露出させて様子を見ながら水やりする方が、手探りで水やりするより感覚を掴みやすいです。
また、球根を埋める場合でも休眠中は表土を減らしておいた方が、少量の水でも根に湿り気を与えられるので管理がしやすくなります。
球根を「埋める」・「露出する」で何が変わるのか

球根を露出させるメリット
- 球根の状態を確認しながら、一株一株に合った水やりができる。
- 用土が乾きやすいので過湿防止になる。
- 生長点が光や風に当たることで、秋の株姿をコンパクトに仕立てやすい。
- 害虫などの異常に気づきやすくなる。
球根を埋めるメリット
- 用土が乾きにくいので過乾燥防止になる。
- 秋に出る葉が大きくなりやすく、生育も旺盛になる。
- 埋まっていることで、物理的に暑さや強光への耐性が上がる。
病害虫
常緑のプルプラセンスやコルチカムで害虫が発生しやすいのは勿論、休眠中の球根に発生するものもいるので油断できません。
各病害虫ならびに「花き類」に適用のある薬剤で予防につとめましょう。肉眼で見える害虫は、まめに捕殺するだけでもかなり被害拡大を抑えることができます。
- 被害を受けやすい種類:プルプラセンスやコウムの新葉
- 主な発生箇所:葉のオモテ面や、展開直前の葉の内側。
- 外見:0.5mmほど。赤黒い砂粒状で、微細な糸を張るので数が多いと目立つ。刺激するとゆっくり動く。
吸汁された箇所が白く点状に脱色され、ひどい場合には葉が真っ白になります。原種シクラメンでは葉裏にはあまり発生しません。気温が高い時期に葉のあるプルプラセンスが特に被害に遭いやすいです。
- 被害を受けやすい種類:プルプラセンス、コルチカム。
- 主な発生箇所:花筒の内部、花弁。
- 外見:1~2mmほど。黄色や褐色で細長い米粒状。刺激すると素早く逃げ回り、時に跳躍する。
プルプラセンスとコルチカムの花に発生しやすく、花筒内部で花粉を食べていることが多いです。花弁を食害されると掠れたように色が抜け、ひどい場合は花自体が枯れます。葉の食害箇所は光沢をおび、デコボコに変形します。
- 被害を受けやすい種類:コウム、ヘデリフォリウム。
- 主な発生箇所:葉柄、葉の裏、葉脈の窪み。
- 外見:1~5mmほど。透明感のある褐色で扁平なカサブタ状。動かない。
食害されても変化が少なく、発生に気づきにくいです。長期間食害されていると球根の萎みが早くなり、水を与えても硬さが戻りづらくなります。
- 被害を受けやすい種類:休眠中の株全般。
- 主な発生箇所:生長点付近。
- 外見:1~4mmほど。粉が吹いたように白く、ギザギザした草履型。動きは緩慢。
生長点付近にとりつき吸汁します。動きは遅いですが刺激すると隙間に逃げ込みます。食害をうけた生長点は秋に葉を出さなくなったり、葉が出たとしてもひどい奇形になるため、被害が大きい害虫です。
- 被害を受けやすい種類:休眠中の株全般。
- 主な発生箇所:根。夜間に地表や球根上に出てくる。
- 外見:1mmほど。幼虫やメスは白いダンゴムシ状で、根の吸汁箇所には青白い粉が発生。緩慢ながらもよく歩き回る。
所謂ネジラミです。生育期には発生に気づきにくく、植え替えや球根露出で発見することが多いです。夜間にメスが地表を活発に歩き回り、他の鉢へ移動します。オスは微細な羽虫で飛んで移動します。数が多いと球根が萎みやすくなり、水を与えても硬さが回復しづらくなります。
夏越しトラブルシューティング
ヘデリフォリウムが狂い咲きする
ヘデリフォリウム、シリシアム、インタミナタムなどは、4~5月の水やりが多いと夏越し中に狂い咲きしやすくなります。蕾が立ち上がってきたら咲く前に摘み取り、休眠中の水やりを継続します。
開花はデンプンなど貯蔵物質を消費します。本来の開花時期であればすぐに葉が展開するため貯蔵物質の量は回復しますが、夏の開花はそれができないためオススメしません。
1輪咲かせただけで大きなマイナスになりませんが、夏期の花は害虫も発生しやすいので摘み取った方が安全です。
インタミナタムの芽が動いている
インタミナタムや選抜品種’マリー’などの一部コウムは、休眠期のかなり早い段階から芽が動いているのが常です。部分的に開花や展葉することがありますが、気温の高いうちは休眠中の水やりを続けます。
水やりしているのに球根に張りがない
弾力のある柔らかさの場合はまだ大丈夫ですが、あまり良い状態とも言えません。
健康な球根はリンゴのように硬く張りがありますが、シワが寄ったりミカンのように柔らかい時は次のような可能性が考えられます。
- 水分が足りていない。
- 種子の採りすぎ。
- 生育期のトラブルで作落ちしている。
- ネコナカイガラムシの発生。
まずは水やりの頻度を増やし、それで改善されない時はその他の原因を考えます。水やりで表土までしか湿らず、根まで届いていない時も水分不足になりやすいです。
硬さが回復しなくても、秋に葉が出れば光合成で回復することも多いです。あきらめず世話を続けましょう。
弾力のない柔らかさの場合、残念ながら腐敗しているか既に枯死して球根が崩れかけています。直射日光で傷んだ箇所も、同様に弾力のない柔らかさになります。
生長点から水が出ている
水やりの量や回数が多いです。水やりの量や頻度を見直しましょう。
グラエカムやミラビレなど乾燥系の種類は、休眠中に用土の水分が多いと生長点からそれを排出します。
生長点が長時間濡れたままだと傷みやすいので、よく風にあてて乾燥させます。
おわりに
夏越しのコツは、「上手い人のノウハウを’’部分的にだけ’’真似しない」、ということだと思います。
たとえば、2人の夏越し上級者がいたとします。
- Aさん:小さい鉢で、毎日のように水やり。
- Bさん:大きい鉢で、完全断水。
この2人から自分に都合の良いノウハウだけを取り入れて、「小さい鉢で、完全断水」のようにすると当然上手くいきません。知り得たノウハウの前提条件が緩いと、知ったことを忠実に真似しても部分的ということもあります。
自身の栽培環境や株の状態がわかるのは自分だけなので、知り得たノウハウは多角的な視点で取り入れた方が、きっと良い結果につながるのではないかと思います。
少しでも元気に秋を迎えられますように!

